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2016.09.15 Thursday

芸術監督のショートエッセイ 石神の丘から vol.84

美術館で毎月発行している小さな情報誌
「石神の丘美術館通信ishibi《いしび》」にて連載中の、
芸術監督・斎藤純のショートエッセイをご紹介します。


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石神の丘美術館芸術監督・斎藤純のショートエッセイ
「石神の丘から vol.84」



SFの世界(小説、映画など)にスチームパンクというジャンルがあります。

19世紀を舞台に、いろいろな先端科学が出てくるのが特徴ですが、そのどれもがアナログな機械仕掛けなのです。

エネルギー源は電気なら上等なほうで、蒸気機関があらゆる分野で活躍します。

たとえば、コンピュータも蒸気駆動という具合です。

おそらく、そこからスチームパンクという名称が生まれたのだろうと思います。

ジュール・ヴェルヌの長編小説『海底2万里』やH.G.ウェルズの諸作品の影響を受けたそれらは、もともとは19世紀のヴィクトリア朝イギリスを舞台にしていました。

ウィリアム・ギブスンとブルース・スターリングの共著『ディファレンス・エンジン』(1990年)がその嚆矢といえるでしょう。

 

今日では英国以外を舞台にしたスチームパンクもたくさんあります。

19世紀のアメリカ西部を舞台にした映画『ワイルド・ワイルド・ウエスト』はスチームパンクの傑作です。

日本では大友克洋の『スチームボーイ』や宮崎駿の『ハウルの動く城』などのアニメ映画がスチームパンクだといわれています。

ちなみに、ここに挙げた3本は私の大好きな映画です。

 

さて、岩手町立石神の丘美術館では『眞壁廉 彫刻展』を開催します(925日〜116日まで)。

岩手町のみなさんには当館野外展示場の人気者「ウミシカ」の作者としてお馴染みの眞壁さんですが、近年はもっぱら鉄を用いた作品を発表しています。

鉄の頭像、馬、昆虫など眞壁さんならではの独特な世界に引き寄せられます。

しかも、可動式になっているものなど仕掛けがあるのも大きな特徴です。

 

これらの作品に接したとき、私はスチームパンクを連想しました(スチールの作品だから、という駄洒落ではありません)。

眞壁さんにスチームパンクとの関連をお尋ねしたところ、眞壁さんはスチームパンクをご存じではありませんでした。

つまり、スチームパンクの影響を受けることなく、別のところからスチームパンクと重なる作品(もっと言うなら、作品をつくるための哲学)が誕生したのです。

これも実に興味深いことです。

 

ひとつひとつに奥深いドラマが潜んでいるように感じられるのも、眞壁さんの作品の特徴です。

眞壁さんは制作にあたって、頭の中に物語を描くとうかがったことがあります。

どんな物語なのか想像しながら見るのも楽しいと思います。

作品から生まれる物語は決してひとつではありません。

みなさんがそれぞれの物語を描いていいのです。

眞壁さんの作品はみなさんにきっとたくさんの物語を提供してくださることでしょう。


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